目次
修辞的効果
レトリックの主な目的は、表現法を工夫することで、受け手に何らかの効果を与えることです。効果を分析するというのは、ある言語表現を使うことによって、その結果として受け手に何が起こるのかを分析することだと言えます。修辞的効果とは、レトリックによる表現効果です。修辞的効果としては、例えば、自然現象がまるで人間の感情をもっているかのように感じられる、表現が簡潔になり伝達する意味が凝縮される、アイロニカルな調子が出る、反復による音楽的な効果が出る、などがあります。
修辞的効果は、用例のコンテクストを分析することなしには分かりません。この意味で、修辞的効果の分析は、語用論的分析の一種であると言えます。このページでは用例の語用論的アノテーションについて述べています。
語用論的アノテーション
枠組み
本コーパスでは、ある用例のレトリックにからんでいるコンテクストを読み解き、その表現を受け取ることによる効果を内省によってテキスト化します。このテキストを修辞学用語によって分類し、効果のパターンを取り出せるようにします。
このページでは、効果のパターンの見取り図として、言語機能による効果の類型を示します。どのような効果であっても、言語表現の機能の一つであることに、変わりはありません。Jakobson (1960) は、言語コミュニケーションを、発信者、受信者、接触、メッセージ、コード、コンテクストの6つの側面からなると考えるモデルを提案しました。このモデルによると、ある言語表現の主な機能は、焦点化される言語コミュニケーションの側面に応じて、次の6つに分けられます。
- 認識的(ないしは間説的)機能(コンテクスト焦点)
- 表出的機能(発信者焦点)
- 対話的(ないしは動能的)機能(受信者焦点)
- 交感的機能(接触焦点)
- メタ言語的機能(コード焦点)
- 詩的機能(メッセージ焦点)
修辞的効果の類型では、言語コミュニケーションのいずれの側面を焦点化するかという観点から、語用論的アノテーションを分類する多種多様な修辞学用語を整理します。用語によっては、2つ以上の言語機能に紐付けられています。
用例の分析
以下のような方針で、用例の語用論的アノテーションを行っています。
- テクストの読解を行い、修辞技法の焦点となる表現の効果を文章化して詳しく記述します。可能であれば、一つの用例に対して、できるだけ多人数の記述を収集します。
- レトリックの文献をもとに、効果の記述にあてはまる修辞学用語をひも付けます。これにより、アノテーションに修辞学的な分類をほどこし、体系化します。
例
例えば「頭からは汗が湧出し流れる」では、焦点となるのは「湧出し」という語で、次のような効果が感じられます。
- 水の湧出からイメージされる水量の多さを利用して、汗が止めどなく流れる様子を描写する。
- 「汗をかく」という慣用表現の使用をメタ的に否定し、「汗を湧出する」という新奇表現を用いている。
- 湧き水のように、汗が止まることなく一定量出続けていることを強調している。
この効果記述は、以下のように、3つの修辞学用語によって分類できます。
- イメジャリー・イメージ (imagery):水の湧出からイメージされる水量の多さを利用して、汗が止めどなく流れる様子を描写する。
- メタ言語 (metalanguage):「汗をかく」という慣用表現の使用をメタ的に否定し、「汗を湧出する」という新奇表現を用いている。
- 過大誇張 (auxesis):湧き水のように、汗が止まることなく一定量出続けていることを強調している。
修辞的効果の類型
認識的効果
認識的 (cognitive) な効果は、言語表現の指示対象を焦点化します。
レトリックは、言葉が表す概念の新しい捉え方を提示する力をもっています。指示対象となっている概念の慣習的な認識をくつがえす修辞的効果が、認識的効果です。
異質性を出す
- 異化 (alienation)は慣習となっている既成の表現法から逸脱した手法をあえて採用することにより、読者や観客・聴衆に規範や標準からのずれを意識させ、相手の注意を喚起して印象を深める手法です。
- 奇想 (conceit)は常識では考えられない奇抜なアイディアによる機知に富んだ表現を駆使する修辞技法です。
- 異例結合 (-)はカテゴリー間の交錯や感覚系統の交差などを含む語結合により,新しい意味を生み出す修辞技法です。
- くびき語法 (zeugma)は統辞的ないしは意味論的要請から、お互いに異質な二つ(以上)の要素を結び合わせることです。
- 混合比喩 (mixed metaphor)はあるトピックに対して用いられた隠喩が,次々に連想を呼び起こし,それが別の隠喩へと波及する間に,そのトピックとイメージとの衝突を来すようになった場合の後続の隠喩です。
- 撞着語法・対義結合・オクシモロン (oxymoron)は常識的には結合不可能と見なされている語どうしを結びつけることです。
イメージを与える
イメジャリー・イメージ (imagery)は最広義の比喩的表現などによる描写中のイメージの総称です。
- 擬人法 (personification)は抽象物、無生物、動植物、つまり人間でないものの状態・動作を人間に見立てて、表現効果を高める文彩です。
- 擬物法・結晶法 (hypostatization)は生きものを物体めかして扱う比喩的な修辞技法です。
- 活喩 (prosopopeia)は不在の人、死者、超自然的存在、動物、無生物などを活躍させる(多くは語らせる)文彩です。
- カテゴリー転換 (-)は人間・動物・植物・物体・抽象体の間をイメージが大きく転換する比喩的修辞技法の総称です。
- 主観化 (subjectification)は物理的あるいは抽象的なものについて言うことが、この対象との関係で考えた主体自身についてしか言えず、理解できない表現です。
- 象徴・シンボル (symbol)は無形の事象・思想・情調などの観念内容を、形象や心像などのシンボルを通じて直観的・感性的に伝える修辞技法です。
- 図地構成 (figure-ground organization)は図とは他のもののなかで、確かな境界や際だった色などによって優勢な形をもつ存在です。
- 迫真法・活写法・現前化 (hypotyposis)はまるで今、目の前にあるかのように生き生きと描写する修辞技法です。
描写する
描写 (description)とは、対象を客観的に観察して知覚し認識して得た内容や感情などをありのままに描き出すことです。
- 自然描写 (description of nature)は山・川・海・森・田園・樹木・花・鳥・風・月などをとりあげる描写です。
- 人物描写 (description of a character)は作中人物の顔・目・唇・胸・姿・声・動作・性格などを描き出す表現です。
- 心理描写 (psychological-description)は喜怒哀楽など、主人公をはじめとする作中人物の気持ちを描き出すことです。
- 風景描写 (scene-description)は読者に想像してもらうために、周りの風景を繊細に描いていくことです。
- クロノグラフィー (choronography)は語りにおける「時間」の描写法全般をさす上位概念です。
フレーミングする
- アナロジー・類推 (analogy)はある関係と別の関係とのあいだに一定の比例関係を方法として想定する考え方です。
- 寓意・アレゴリー (allegory)は事柄や関係などをそっくり他の事柄や関係などに置き換えて暗示的に表現する比喩的な修辞技法です。
対比する
- 対照法・対照 (antithesis)は対照的な二者を並立させ、たがいに引き立て合うように配する修辞技法です。
- 並列法・パラタクシス (parataxis)は節どうしの関係を明示せず、単に両者が対をなすように並べるだけで,意味関係を相手の推測にゆだねる修辞技法です。
- 類義区別・微差拡大 (paradiastore)は世間の常識としてはほとんど同じようなことを、極端に違うものとして扱う、類義峻別の修辞技法です。
- 訂正・換言 (epanorthosis)は一度用いた語句をあとから別のより適切な語句を用いて言い直す修辞法です。
- 逆説・パラドクス (paradox)は一見すると真理に反することを言うようで,実際は真理を示唆する言述です。
- 語意反用・反用法 (antiphasis)は或る語句の通常の意味とは正反対の意味を伝えようとする反語です。
具体化する
挙例法・例証・範例 (example)は一般的=抽象的な話題(主張)を説明するために分かりやすい例を挙げることです。
- 列挙法・列挙・列叙 (enumeration)は上位概念のかわりに,二つ以上の下位概念を並列して挙げていくことによって全体的な印象を強める手法です。
- 拡充法・敷衍 (amplification)はさまざまな観点から陳述を繰り広げつつ,それを拡大していく修辞的手法です。
- 配分法 (-)はまず概括的に記述し,その詳細を先分かれの形で補足展開する修辞技法です。
- 漸層法・クライマックス (climax)ははしごを上がるように,一段一段表現を強めていき,最後に一番力強い語句で締めくくって,読者または聞き手の心に深い印象を与えようとする修辞法です。
- 漸降法・アンチクライマックス (anticlimax)は叙述が進行するにつれて次第に尻すぼみになるように展開させる修辞技法です。
表出的効果
表出的 (expressive) な効果は、話者や語り手を焦点化します。
言語表現は、言葉を使う主体の主観的な態度を表出します。主体の感情や評価を示す修辞的効果が、表出的効果です。
感情を表出する
- 感嘆法・詠嘆法 (exclamation)は感情の高まり・深い感銘・切ない気持などを表現するために、強く、深く、切なく、鋭い語句や言い回しを用いて,相手の情緒に訴える修辞法です。
- 情化法 (-)は語句の対象的意味を動かさずに,接辞の付加などによって感情的なニュァンスを添える修辞技法です。
- 迫真法・活写法・現前化 (hypotyposis)はまるで今、目の前にあるかのように生き生きと描写する修辞技法です。
- 変態法 (-)は書き手が興奮して作中人物の待遇や人称などの扱いが途中で急変するように書く修辞技法です。
- 共感・感情移入 (sympathy/empathy)は他者に自己を投影したり、他者の感情について認識することです。
- 呼びかけ法・頓呼法 (apostrophe)は演説などの途中で話し手が(あるいは、詩文などの途中で作者が)、説いてきたり語ってきた話題の中で感情の高まりあふれるあまり、その話題を中断し、神や第三者や物に対して呼びかけることです。
- あだ名 (nickname)はある人に,本名のほかに親愛または嘲笑の気持をこめてつける別名のことです。
人柄を表出する
言葉が、発信者の人柄や人物像を表出することがあります。
- 権威論法 (argument of authority)は説得術における挙例法・例証・範例 (example)の一種で、自分の意見の正しさを保障してくれるものとして、有名作家・学者・専門家など権威のある人の見解を持ち出して補強する論法です。
- 専門用語・職業語 (technical term)は特定の社会で人為的に作られた言語、主として語で、特に、職業や専門を同じくする人の間に使われるものです。
- 俗語・スラング (slang)は話しことばに新しく用いられるようになった新しい語詞・語句・慣用的な表現などのうち、改まった場席で用いられないものです。
- 尊大語 (-)は自分や自分の側の人物やその動作を高く扱うものです。
強調する
- 極言 (-)は強調のために細かいニュアンスを切り捨て,極端に表現する修辞技法です。
- 強調 (emphasis)は話し手あるいは書き手がコミュニケーションのなかで意図する重要性にもとづいて、語、文、パラグラフを配列することです。
- 漸層法・クライマックス (climax)ははしごを上がるように、一段一段表現を強めていき、最後に一番力強い語句で締めくくって、読者または聞き手の心に深い印象を与えようとする修辞法です。
- 前景化 (foregrounding)はあるテキストがテキストの残りの背景部分に対して、特定の効果をもたらすために強調され、際だっていることです。
- 畳語法 (epizeuxis)は同じ語句を繰り返すことによって強調性を高める修辞法です。
- 修辞疑問・修辞的疑問文 (rhetorical question)は疑問文の形式を使うことで、平叙文で言った場合より断定の意味を強めます。
ためらいを表出する
- 疑惑法・ためらい (aporia)は話し手(書き手)が当惑、優柔不断、慎重さなどなんらかの理由で語の選択、行動の選択、事象の解釈で決断を下せずためらいを示すことです。
- 暗示的看過法・陽否陰述・逆言法 (preterition)は言わない、あるいは言えないと主張しておきながらその実しっかりと(ちゃっかりと)言うことです。
- 追加法 (-)は文が終わったと思われたのにさらにまた言い足す文彩です。
- 訂正・換言 (epanorthosis)は一度用いた語句をあとから別のより適切な語句を用いて言い直す修辞法です。
評価を示す
評価 (evaluation)は話者の側からみた話の要点や興味を示すことです。特に、誇張法 (hyperbole)は大げさに言うこと、つまり物事を極端に拡大して大きく表現するか、あるいは反対に極端に縮小して小さく表現することです。
- 過小誇張 (meiosis)は事実や認識を縮小する方向の誇張法 (hyperbole)です。
- 過大誇張 (auxesis)は事実や認識を極端に拡大して述べる誇張法 (hyperbole)です。
- 緩叙法・曲言法 (litotes)は事物を控え目に言い、かえって表現を効果的にする言い方です。
対話的効果
対話的 (dialogic) な効果は、言語表現の受け手を焦点化します。
言語表現を効果的に用いると、表現を受け取る主体に影響を与えることができます。対話的効果は、含意、説得力、配慮などを示す修辞的効果です。
簡潔にする
- 省略法・省略 (ellipsis)は文の意味があいまいにならない程度に語句をはぶいて、表現を簡潔にすることで、印象を深め、余韻を残す方法です。
- 省筆 (-)はものごとを隅ずみまで述べず,簡潔にすっきりと言語化する修辞技法です。
- 短縮語・略語 (clipping)は長い言葉が縮(ちぢ)まってできたものです。
ほのめかす
- 迂言法 (periphrasis)は簡潔な固有の言い方があるのにわざわざ回りくどい言い方をすることです。
- 代称・ケニング (kenning)は人間や事物を、その名称をさす名詞を用いる代わりに,複合語や名詞句で隠喩的に遠まわしに表現する修辞技法です。
- 含意法 (implication)はその意味内容から読者がさらに別のことを理解するようにうながす表現法です。
- 誤解誘導 (-)は必要情報を故意に伏せて、誤った思い込みを誘う修辞技法です。
- 情報待機・懸延法・サスペンス (suspense)は元来は宙ぶらりん・どっちつかず・不安などを意味するが、筋の展開の上で、読者・観客を、この先どうなることかとの不安感・緊張感を保った状態に置くことです。
- 側写法 (metalepsis)は表現対象をその正面からでなく側面からとらえて述べる修辞技法です。
- 美化法 (-)は醜い対象を美しいものにとらえなおして遠まわしに表現する修辞技法です。
- 修辞的否定 (rhetorical negation)は望んでいることを逆に打ち消してみせることで,その真意を察知させる修辞技法です。
配慮する
- 婉曲語法 (euphemism)は差しさわりのある直接的な表現をあたりさわりのない穏やかな表現に換えることです。
- 美化法 (-)は醜い対象を美しいものにとらえなおして遠まわしに表現する修辞技法です。
あいまいにする
- 曖昧語法・曖昧性 (amphibology)は意味が曖昧になるよう、意図的に広義あるいは多義の表現を用いる修辞技法です。
- 重義法・秀句 (pun)は一つの表現から複数の意味がくみとれるように表現形態を工夫する修辞技法です。
- 兼用法・異義兼用 (syllepsis)はひとつの語に字義的な意味と比喩的な意味とを同時にもたせることです。
- 同音異義 (homonymy)は発音が全く同じで意味が異なることです。
- 同語異義復言・異義反復 (antanaclasis)は隣接した箇所で同一の言葉を違った意味で使うことです。
- くびき語法 (zeugma)は統辞的ないしは意味論的要請から、お互いに異質な二つ(以上)の要素を結び合わせることです。
楽しませる
ユーモア (humour)は緊張をやわらげ、上品な笑いを誘う表現効果です。
- 言葉遊び (wordplay)は音声言語であれ文字言語であれ,言語本来の機能である伝達を目的とするのではなく,楽しみやゲームの材料や手段として言語を用いて,おもしろさやおかしさを求めることです。
- 字謎・文字遊び (-)は漢字本来の意味とは関係なく文字構成を分解して、別の意味に読み替えるような文字遊びです。
- 誤用・マラプロピズム (malapropism)は語(句)のこっけいな誤用のことです。
- 冗語法 (pleonasm)は主として滑稽感を出すため,論理的には不必要な過剰表現をことさらくどく付け加える修辞技法です。
- 駄洒落 (-)は一つの音構成に複数の意味をもたせる目的で,情報伝達としては無意味なことばを添える修辞技法です。
- 露骨語法・毒舌法 (dysphemism)は好ましいこと,あるいは不偏的なことを,不快感・非難軽蔑・ユーモアなど含む偏見をおびたことばで表現するものです。
驚かせる
- 奇先法 (-)はまず結論を突きつけて人を驚かせ、その後でおもむろに説明(根拠)を示す文彩です。
- 異化 (alienation)は慣習となっている既成の表現法から逸脱した手法をあえて採用することにより、読者や観客・聴衆に規範や標準からのずれを意識させ、相手の注意を喚起して印象を深める手法です。
- 奇想 (conceit)は常識では考えられない奇抜なアイディアによる機知に富んだ表現を駆使する修辞技法です。
- 殊句 (-)は文章中で他から際立って見える、この一句、この一文といった、はっとするような表現を折り込んで,鮮やかな印象をあたえる修辞技法です。
- 撞着語法・対義結合・オクシモロン (oxymoron)は常識的には結合不可能と見なされている語どうしを結びつけることです。
- 逆説・パラドクス (paradox)は一見すると真理に反することを言うようで、実際は真理を示唆する言述です。
説得する
説得 (persuasion)は言語や記号行為によって他者の意志決定に影響を与えるプロセスです。
- 設疑法 (interrogation)は不在の人物や超越存在、事物に疑問を投げかけたり、聞き手(読み手)に問いかけたりすることです。
- 修辞的譲歩 (synchoresis)は反論(矛盾)あるいは罠に先立つところの、敵対者に対してなされる見せかけだけの譲歩です。
- 誤解誘導 (-)は必要情報を故意に伏せて,誤った思い込みを誘う修辞技法です。
- 暗示的看過法・陽否陰述・逆言法 (preterition)は言わない、あるいは言えないと主張しておきながらその実しっかりと(ちゃっかりと)言うことです。
- 定義 (definition)は物事を短く説明することです。
- 配分法 (-)はまず概括的に記述し,その詳細を先分かれの形で補足展開する修辞技法です。
- 明晰 (clarity)は文体が明瞭で明快であることです。
- 両刀論法・ジレンマ (dilemma)は命題を二つ立てて、どちらになってもよいように構成する論法です。
攻撃する
- 皮肉・反語・アイロニー (irony)は陽気な、あるいは深刻なからかいによって、自分が思っていること、あるいは人に思わせようと欲していることの反対を言うことです。
- 揚げ足取り (asteismus)は相手のことばじりをとらえて、その意味を反語化するように、機知に富んだ応酬を示す修辞技法です。
- 当てこすり (innuendo)はその対象となるべき人物の性格、能力、その他の特徴を遠回しにそれとなくけなす修辞表現法です。
- 反語的緩和 (charientismus)は装われた好意の隠蓑の下で批判を行う反語です。
交感的効果
交感的 (phatic) な効果では、コミュニケーションのチャネルを持続させたり、活性化したりすることに焦点が置かれます。
表現内容の伝達よりも、その伝達を可能としている言語的コミュニケーションの場に何らかの影響を与える効果が、交感的効果です。
メタ言語的効果
メタ言語的 (metalinguistic) な効果は、言語の形式と意味の慣習的な結合のあり方を焦点化します。
慣習的な語法を知っているからこそ、それがレトリックであると感じられる表現は数多くあります。文法体系や語形式を意識したり、慣習的な記号関係のあり方自体に注意を向ける効果が、メタ言語的効果です。
メタ言語 (metalanguage)は何らかの理由で言語表現に注意を引くために用いられる言語を言います。
音韻への注目
- ジングル (jingle)は同音または類似語のくり返しによって調子よく響くように配列したことばや詩です。
- リズム (rhythm)は一定の拍数の句やその組み合わせを規則的にくりかえす修辞技法です。
- 同音異義 (homonymy)は発音が全く同じで意味が異なることです。
文字への注目
- 字謎・文字遊び (-)は漢字本来の意味とは関係なく文字構成を分解して、別の意味に読み替えるような文字遊びです。
- 書記変換・カタカナ語 (metagraph)は規範とされる正書法を意図的に破って修辞的効果を高める手法です。
語構成への注目
- 逆成・逆形成 (back-formation)は本来なかった派生や転成の関係を考えて、もとになったと思われる語をつくりだすことです。
- 混成・混交 (blending)は2個の音,語句または構文が混同合成されて、新しい音、語句または構文を生み出すことです。
- 新語・造語 (neology)は新しい語彙単位の形成過程です。
- 短縮語・略語 (clipping)は長い言葉が縮まってできたものです。
- 派生・派生語 (derivation)は形態素に接辞を添加して語を形成することです。
- 品詞転換 (conversion)はある語が形態を変化させずに一つの品詞から他の品詞に変わることです。
- 複合語・複合 (compound)は二つ(以上)の語または語基、連結形の合成結合によってできた語です。
- もじり (-)はもとの音を少しよじり歪めて、それらしく聞かせる技巧です。
- 臨時語 (nonce word)は語本来の用法に従うのではなく、表現の揚に臨時的に適合するように用いた(または形成した)語です。
文構造への注目
- イディオム・慣用表現 (idiom)は語句の結びつきが慣習的であり、特殊な語感や意味内容をもっているものです。
- 違反用法・語法違反 (solecism)はある言語の慣用法または文法規則に関し、標準的用法に違反することです。
- 意味構文 (synesis)は形態的な一致よりもむしろ意味を重視した構文です。
- 誤用・マラプロピズム (malapropism)は語(句)のこっけいな誤用のことです。
- 代換法・代換 (hypallage)は文中の二つのことばの関係を,文意や常識と逆転させる修辞技法です。
- 転移修飾語 (transferred epithet)は意味的にはある名詞を修飾するはずの形容を,同じ文の別の名詞を修飾する位置にずらして刺激をあたえる修辞技法です。
- 転用語法 (enallage)は注意をひく目的で,名詞とそれを修飾する形容詞などとの関係が,意味的・語法的に論理を逸脱するように表現する修辞技法です。
意味への注目
ある語句がどんな意味であるか、メタ的に意識させる表現があります。
- 縁語・縁装法 (-)は主想となる語と意味的に関連のある語を意図的に詠い込むことです。
- 冗語法 (pleonasm)は主として滑稽感を出すため,論理的には不必要な過剰表現をことさらくどく付け加える修辞技法です。
- 同語反復・トートロジー (tautology)は「AはA」のように主語と述部に同じ言葉を繰り返す文彩です。
- 死喩 (dead metaphor)は使い古される間に比喩性が薄れて慣用句のように固定化し,比喩起源であることがほとんど意識にのぼらなくなった段階の隠喩です。
- 濫喩・カタクレシス (catachresis)は名称を欠いている事物を表意するために用いられた転義的文彩です。
- 定義 (definition)は物事を短く説明することです。
- 反義語・対義語 (antonym)は意味的に反対関係にある二つ(以上)の語です。
- 換称 (antonomasia)は同類一般を表す名辞の代わりに固有名を用いること、あるいは逆に、固有名の代わりに同類一般を表す名辞を用いることです。
文体への注目
- 古語・古語法 (archaism)は今日ではふつう用いない古い単語・語法・文体です。
- 外国語混用・マカロニ体 (macaronic style)は平板に陥るのを避けるため、故意に外国語を混在させる表現法です。
- 専門用語・職業語 (technical term)は特定の社会で人為的に作られた言語、主として語で、特に、職業や専門を同じくする人の間に使われるものです。
- 俗語・スラング (slang)は話しことばに新しく用いられるようになった新しい語詞・語句・慣用的な表現などのうち、改まった場席で用いられないものです。
- 卑語 (vulgarism)は無教育な階層に行なわれる卑俗な言語的特徴です。
- 避板法 (variation)は語句前後、用語転換、長短参差(しんし)、諸体交用などによって、文章の表現面に変化をつける修辞技法です。
- 文語体 (literary language)は口頭で話す話し言葉に対する文章語です。
- 文体落差 (-)は表現様式の形態と内容とのギャップをことさら目立たせる修辞技法です。
- 明晰 (clarity)は文体が明瞭で明快であることです。
- 流行語 (vogue word)は新語の一種で、その時代に適応した用語です。
談話・テクストへの注目
テクストに言及するテクストは、談話に言及する談話は、間テクスト性をもちます。
- 暗示引用 (allusion)は著名な原表現をそのまま引用するのではなく、それを連想する契機となるような言語表現を用意することにより、表面上の意味がひととおり通るようにしながら、同時にその裏に別の映像をフラッシュのように流す修辞技法です。
- 引用・引喩 (quotation)は表現効果を高めるために、世人によく知られた文句や著名な作品の文句を、それとなく取り入れて表現する修辞法です。
- 打ち返し (crossing)は既成のことわざを踏まえながら、その一部を差し換えることによって、その論理をひっくりかえす手法です。
- 直接話法・明示引用 (direct narration)は被伝達部を被伝達者のことばどおりに伝える方法です。
- 間接話法 (indirect speech)は被伝達部を伝達者のことばに直して伝える方法です。
- 呼びかけ法・頓呼法 (apostrophe)は演説などの途中で話し手が、また、詩文などの途中で作者が、説いてきたり語ってきた話題の中で感情の高まりあふれるあまり、その話題を中断し、神や第三者や物に対して呼びかけることです。
- 隔行対話 (stichomythia)は2人の人物が通例1行ずつの詩で交互に対話していく形式です。
詩的効果
詩的 (poetic) な効果は、言語表現の意味ではなく、表現形式それ自体を焦点化します。
表現形式の等価性(ないしは反復)を前景化すると、意味ではなく、形式の価値を引き出すことができます。表現の形式の価値を引き出すのが詩的効果です。
反復
反復法・反復 (repetition)は表現効果を高めるために、同一または類似の語句またはその一部を繰り返す修辞法の総称です。
- 押韻 (rhyme)は詩句や詩行の終わりあるいは始まりに、同じ音をもつ語を配置し、そのくり返しによるリズムの効果とともに、同音に喚起される連想効果をもたらそうとする技法です。
- 脚韻 (end rhyme)は句や文の末尾を同じ音でそろえる修辞技法です。
- リズム (rhythm)は一定の拍数の句やその組み合わせを規則的にくりかえす修辞技法です。
- 回帰反復 (epanados)はすぐに反復せず、しばらく間を空けて前の語句をくりかえす修辞技法です。
- 隔語句反復・畳点法 (epanalepsis)は同一の語句を連続的に用いるなど、文章中の一定箇所に同じことばをちりばめる修辞技法です。
- 強調反復 (diacope)は同一の行または文の中で同じことばをくりかえして強調効果をはかる修辞技法です。
- 畳語法 (epizeuxis)は同じ語句を繰り返すことによって強調性を高める修辞法です。
- 結句反復・エピストロフィー (epistrophe)は強調などの表現効果を挙げるために、前の文(または節・句)の最後の語句を次の文(または節・句)の終わりで繰り返す修辞法です。
- ジングル (jingle)は同音または類似語のくり返しによって調子よく響くように配列したことばや詩です。
- 同語反復・トートロジー (tautology)は「AはA」のように主語と述部に同じ言葉を繰り返す文彩です。
- 同族反復 (ploce)は同族目的文を用いる形で同語をくりかえす修辞技法です。
- 派生語反復法・変形反復 (polyptoton)は同一文章内で同じ語を屈折変化させて反復する修辞法です。
- 類音反復・類音語接近 (paronomasia)は音の同じ語や類似した語を重ねて用い、意味の荘重さ・対照的なおもしろ味・意外さなどの効果を狙う修辞法です。
類像性
類像性・イコン性 (iconicity)はある発話の意味論的(「内容」)レベルと統語論的(「形式」)レベルの間の調和です。
- 音象徴 (sound symbolism)はその語の意味と何らかのつながりがあると感じられる音です。
- 声喩・オノマトペ (onomatoeia)はオノマトペを用いて感覚的に伝達する表現法です。
- 畳語法 (epizeuxis)は同じ語句を繰り返すことによって強調性を高める修辞法です。
- 強調反復 (diacope)は同一の行または文の中で同じことばをくりかえして強調効果をはかる修辞技法です。
ことば遊び
言葉遊び (wordplay)は音声言語であれ文字言語であれ、言語本来の機能である伝達を目的とするのではなく、楽しみやゲームの材料や手段として言語を用いて、おもしろさやおかしさを求めることです。
ことば遊びは、意味を背景化し、形式を前景化します。
- 地口・しゃれ (pun)は同一の語を異なった意味に用いたり、同音(または類似の音)異義語を掛けて用いる言葉遊びです。
- 字謎・文字遊び (-)は漢字本来の意味とは関係なく文字構成を分解して、別の意味に読み替えるような文字遊びです。
- 誤用・マラプロピズム (malapropism)は語(句)のこっけいな誤用のことです。
- 虚辞・むだ口 (expletive)は主として韻律をととのえるため、実質的な意味の稀薄な形式的な語句を付加する修辞技法です。
- 句読法 (punctuation)は口調がよくなるように句読点の位置を操作する修辞技法です。
- 冗語法 (pleonasm)は主として滑稽感を出すため、論理的には不必要な過剰表現をことさらくどく付け加える修辞技法です。
- 駄洒落 (-)は一つの音構成に複数の意味をもたせる目的で、情報伝達としては無意味なことばを添える修辞技法です。
- もじり (-)はもとの音を少しよじり歪めて、それらしく聞かせる技巧です。
- 類音反復・類音語接近 (paronomasia)は音の同じ語や類似した語を重ねて用い、意味の荘重さ・対照的なおもしろ味・意外さなどの効果を狙う修辞法です。
アノテーション結果
※用例数は2024年1月22日現在