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例示構文

以前のリビジョンの文書です


例示構文

Description

例示構文は、構文の形式的関係が、起点領域と共通領域の要素間関係を表す。構文が表す修飾関係の被修飾部ないしは叙述関係の述部が表す共通領域の概念を具体化する。以下のように、修飾構文の用例が多く見られる。

例示方略は、目標領域の概念がもつ性質や特徴、より正確には、比喩の根拠になる起点領域と目標領域の共通要素を具体化する。例えば (1) は「校長」が「狸」に喩えられているが、目標領域である校長の目に焦点が当てられ、その目が「狸」を例に比喩的に説明されている。さらにこの眼の比喩を介して、人間 (i.e. 校長) が動物 (i.e. 狸) と間接的に対応づけられる。

(2) では「お八重の笑顔」が「美しく無邪気であった」様を説明するために「女神」を引き合いに出すことで美しさを具体化している。結果的に「女神」は「お八重」の比喩として理解される。(1) や (2) では、統語的に直接結合されているのは、起点領域の要素を表す語句と、目標領域と起点領域の比較の着眼点を表す語句である。それにもかかわらず、意味解釈の上では、主題や修飾部に含まれる名詞句が表す概念間に写像関係 (i.e. 校長=狸、お八重=女神) が構築されている。

ここでは、「例示」という用語を広い意味で用いる。狭い意味では、例示はカテゴリーの成員を例として示すことをいう。例えば「バナナのような果物」では、バナナが果物というカテゴリーの成員であるという点で、バナナは果物の例である。(16) の「狸のような眼」では狸が眼というカテゴリーの成員であるというわけではないが、これは “狸の眼のような眼” という意味で理解できる。このように、修飾部Xと被修飾部Yについて、XのYという側面がYの例である場合も、一種の「例示」であるとみなす。

同様の例としては「猿のような顔」「レモンのような匂い」「宝石のような美しさ」等が挙げられる。(3) では「金粉」の「きらめ」くという側面が、葉のきらめきの例になっている。同様の分析は (4) にも適用できる。

(5) では、形容しがたい「微笑」の様相を、架空の物語的設定を例に出すことで具体化している。ここでは「悪戯」や「年長者」といった要素に対応する要素が目標領域に見つからなくとも、(5) の比喩は理解できる。この点で、(5) の比喩の主な目的は「微笑」の知覚的なイメージを具体化することであると考えることができる。(6) では、形容しがたい「気持ち」が「南京花火」のイメージによって具体化されている。

例示方略には、(5)(6) のように起点領域の要素を複雑な修飾表現によって表現することで、被修飾部が表す具体性の低い目標領域の要素を、比喩的なイメージによって豊かに拡張する用例が多く観察される。(6) では「{ 南京花火みてえな / ??φ} 気持ちになっちまいましてね」のように、比喩的な修飾部を取り去ると不自然になる。同様の特徴は、「形」「声」「面持ち」「姿」「面影」「格好」などの知覚的イメージを具体化する用例や、「意気込み」「心もち」「思い」「感じ」などの心理状態を具体化する用例にもみられる。この種の用例では、喩えられているイメージや心理状態は直接的に把握しにくい。つまり、写像先である目標領域には対応づけるべき要素が多くは存在せず、比喩的な例示によってはじめて目標領域要素の概念化が進むように思われる。この点では、例示方略は目標領域と起点領域を明示的に対応づける直接写像方略とは、大きく異なる特徴をもつといえる。

Examples
最終更新: 2019/09/26 15:57