ex:a0108-1

「三時少し過ぎているから、三時少し過ぎているのだ」

「三時少し過ぎているから、三時少し過ぎているのだ」

Page Type Example
Example ID a0108-1
Author 幸田露伴
Piece 「観画談」
Reference 『幸田露伴』
Pages in Reference 128

Text

気がついて時計を出して見た。時計の針は三時少し過ぎであることを示していた。三時少し過ぎているから、三時少し過ぎているのだ。驚くことは何もないのだが、大噐氏はまた驚いた。ジッと時計の文字盤を見詰めたが、遂に時計を引出して、洋燈の下、小机の上に置いた。秒針はチ、チ、チ、チと音を立てた。音がするのだから、音が聞えるのだ。驚くことは何もないのだが、大噐氏はまた驚いた。

Context Focus Standard Context
三時少し過ぎているから 三時少し過ぎているのだ ()

  • 「から…のだ」と、因果関係を表す複文であるにもかかわらず、前件と後件が同一になっている。
  • 「音がするのだから、音が聞えるのだ」と構文が同一であり、パラレリズムをなす。ただし、「音がする」から「聞こえる」というのは、やや不自然ながら意味が分かるが、「三時少し過ぎている」から「三時少し過ぎている」というのは言わんとすることが何か不明。

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 自明の事柄を、「から」「のだ」といった因果関係の構造で表現することから、狂気性が感じられる。
誇張法 (hyperbole) ただ反復するだけではなく、同一内容を因果関係として表現することによって、論理的に恒真である内容について「大噐氏」が思考しているということを強調している。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)