ex:a2455
「墓場を発いて屍体を嗜む変質者のような残忍なよろこび」
「墓場を発いて屍体を嗜む変質者のような残忍なよろこび」
| Page Type | Example |
|---|---|
| Example ID | a2455 |
| Author | 梶井基次郎 |
| Piece | 「桜の樹の下には」 |
| Reference | 『梶井基次郎』 |
| Pages in Reference | 46 |
Text
「俺はそれを見たとき、胸が衝かれるような気がした。墓場を発いて屍体を嗜む変質者のような残忍なよろこびを俺は味わった。」
| Context | Focus | Standard | Context |
|---|---|---|---|
| 墓場を発いて屍体を嗜む変質者 | () | のような残忍なよろこび |
- 先行文脈に「二三日前、俺は、ここの溪(たに)へ下りて、石の上を伝い歩きしていた。水のしぶきのなかからは、あちらからもこちらからも、薄羽かげろうがアフロディットのように生まれて来て、溪の空をめがけて舞い上がってゆくのが見えた。おまえも知っているとおり、彼らはそこで美しい結婚をするのだ。しばらく歩いていると、俺は変なものに出喰(でく)わした。それは溪の水が乾いた磧(かわら)へ、小さい水溜を残している、その水のなかだった。思いがけない石油を流したような光彩が、一面に浮いているのだ。おまえはそれを何だったと思う。それは何万匹とも数の知れない、薄羽かげろうの屍体だったのだ。隙間なく水の面を被っている、彼らのかさなりあった翅(はね)が、光にちぢれて油のような光彩を流しているのだ。そこが、産卵を終わった彼らの墓場だったのだ。」とある。「それ」はウスバカゲロウの死体を指す。
Rhetoric
Semantics
Grammar
| Lexical Slots | Conceptual Domain |
|---|---|
| A | Source |
| B | Elaboration |
| C | Target |
| Preceding | Morpheme | Following | Usage | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | A | の[ような] | C | の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合 |
| 2 | A | [の]ような | C | 様-類似-連体形 |
| 3 | B | - | C | 統語関係 |
Pragmatics
| Category | Effect |
|---|---|
| 心理描写 (psychological-description) | 美しかった薄羽かげろうの死骸の溜まりを発見し、その情景に美と喜びを感じとるという特異な発話者の感覚を、墓を暴く人のイメージを提示することで把握しやすいものとする。 |
| イメジャリー・イメージ (imagery) | 「俺」の心に去来した喜びを、墓を暴く人のイメージを用いて表現する。 |
最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)
