ex:a2186

「盲人のようにそとの風景を凝視(みつ)める」

「盲人のようにそとの風景を凝視(みつ)める」

Page Type Example
Example ID a2186
Author 梶井基次郎
Piece 「冬の日」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 298

Text

堯はこの頃生きる熱意をまるで感じなくなっていた。一日一日が彼を引き摺(ず)っていた。そして裡に住むべきところをなくした魂は、常に外界へ逃れよう逃れようと焦慮(あせ)っていた。——昼は部屋の窓を展いて盲人のようにそとの風景を凝視(みつ)める。夜は屋の外の物音や鉄瓶の音に聾者のような耳を澄ます。

Context Focus Standard Context
盲人 (自分) のようにそとの風景を凝視める

  • 死にゆく自分を自覚し、感覚を失っている様を描いている。

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 盲人 = 自分 自分=健常者

Grammar

Construction AのようにB
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A の[ように] B の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
2 A [の]ように B 様-類似-連用形

  • 「盲人」は見つめている人物をTargetとすると解釈し、「みつめる」はElaborationとした。

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 「盲人」という定義的に視覚を失っている主体を「凝視(みつ)める」という動詞の主語に取ることにより、不可能なこと実行したいという願望を表現している。
人物描写 (description of a character) 外界を見ているが、盲人と同じく何等の情報も取得していないとすることで、発話者の気力を喪失した姿をまざまざと見せる。
古語・古語法 (archaism) 「盲人」という差別的な響きを有する語を用いている。
転用語法 (enallage) 視力を前提とする「凝視める」という動詞の主語に、視力をもたない「盲人」を置いている。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)