ex:a1645

「現実を写すだけならカメラと指が二三本あるだけで沢山ですよ」

「現実を写すだけならカメラと指が二三本あるだけで沢山ですよ」

Page Type Example
Example ID a1645
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 256

Text

思いきって社長室へ乗込んで、戦争と芸術性の貧困とに理論上の必然性がありますか。それとも軍部の意思ですか、ただ現実を写すだけならカメラと指が二三本あるだけで沢山ですよ。如何なるアングルによって之(これ)を裁断し芸術に構成するかという特別な使命のために我々芸術家の存在が――社長は途中に顔をそむけて苦りきって煙草をふかし、お前はなぜ会社をやめないのか、徴用が怖いからか、という顔附で苦笑をはじめ、会社の企画通り世間なみの仕事に精をだすだけで、それで月給が貰えるならよけいなことを考えるな、生意気すぎるという顔附になり、一言も返事せずに、帰れという身振りを示すのであった。

Context Focus Standard Context
カメラと 指が二三本ある (シャッターを押す) だけで沢山ですよ

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 > 撮影 指>撮影

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) ただ現実を写すだけなら誰でもできること(指が2、3本あればよい)だという伊沢の主張を、大袈裟に表現する。
評価 (evaluation) 芸術の貧困を誇張的な表現で嘲っている。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)