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「一番鬮(くじ)の本鬮はドッチミチこっちのもんだ」
「一番鬮(くじ)の本鬮はドッチミチこっちのもんだ」
Text
「ところがここに一つうまい事が持上りました。その女たちの中でも一等捌(さば)けるピン嬢(ちゃん)とチョキ嬢(ちゃん)という二人がノスタレだかオシッコだかわかりませんが病気になっちゃったんで、とりあえずの埋め合わせに聖路易(セントルイス)の支那料理屋に居たというチイチイっていうのとフイフイっていうのと二人の別嬪が手助けに来たんでげす。何しろ一人で卓子(テーブル)を六つ宛(ずつ)も持っているんで一人欠けても頬返(ほおげえ)しが附かないですからね。占めた。こいつは有難いことになったもんだと私(あっし)は内心でゾクゾク喜んじゃいました。ねえ。そうでしょう。今まで居た女には指一本さしても不可(いけ)なかったかも知れねえが、今度来た女なら差支(さしつけ)えなかろう。しかも向うが二人前ならこっちも二人前と云いてえが、片っ方が禿頭(はげあたま)の赤ッ鼻のノスタレじゃ問題にならねえ。若さといい、男前といい、一番鬮(くじ)の本鬮(ほんくじ)はドッチミチこっちのもんだがハテ。ドッチから先に箸(はし)を取ろうかテンデ、知らん顔をして「わんかぷ、てんせんす」のおまじないを唱えながら二三日ジッと様子を見ているとドウです。このチイ嬢(ちゃん)とフイ嬢(ちゃん)の二人が一緒に、あっしの方へ色目を使い初めたじゃ御座んせんか。」
Context | Focus | Standard | Context |
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一番鬮(くじ)の本鬮 | (別嬪の娘) |
- 先行文脈に「ヘエ。その病気の名前でゲスか。エエト……そうそう六の親父のが「野垂(のた)れ死に」てえんで、あっしのが「鸚鵡(おうむ)・小便(シッコ)」てんだそうで……笑いごとじゃねえんで……ヘエ。ノスタレジイ……ノスタルジヤにホーム・シックでゲスかい。どうもおかしいと思った。お笑いになっちゃ困ります。二人とも熱が八度ばかり出ましたよ。日本へ帰ってから聞いてみたら舶来の神経衰弱なんだそうで……重いのがノスタレジイで軽いのがオーム・シッコてんだそうですが、ハイカラな病気があればあるもんですな。派手な浴衣の赤褌(あかふんどし)に、黄色い手拭の向う鉢巻がノスタレのオーム・シッコでウンウン云ってるんですから世話ありやせんや……。」とある。
Rhetoric
Semantics
Grammar
Construction | |
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Mapping Type |
Lexical Slots | Conceptual Domain |
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Preceding | Morpheme | Following | Usage |
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Pragmatics
Category | Effect |
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尊大語 (-) | 植木屋の老人を貶め、自分の価値が高いことを、懸賞でたったひとつしかない当たりくじに自分をなぞらえることで表している。 |
評価 (evaluation) | 植木屋の老人と自分とを比べ、自分のほうが男として非常に価値が高いことを表現する。 |
最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)