「しかし私は、悲劇（トラジディ）や喜劇（コメディ）よりも同等以下に低い精神から道化（ファルス）が生み出されるものとは考えていない。しかし一般には、笑ひは泪（なみだ）より内容の低いものとせられ、当今は、喜劇というものが泪の裏打ちによってのみ危く抹殺を免かれているくらいであるから、道化のごとき代物は、芸術の埒外（らちがい）へ、投げ捨てられているのが普通である。」（坂口安吾「FARCEに就て」: 44）

• 喜劇を笑い、悲劇を泪とする換喩をこのあとの文章でも用いるので、最初に分かりやすく並列的に表現している。

• 象徴的　喜劇、悲劇という漢語の繰り返しを避けて、文章に情動的なイメージを与えている。