ex:a1049

「二三人の男が、敗走した兵士のように駈け出して行く」

「二三人の男が、敗走した兵士のように駈け出して行く」

Page Type Example
Example ID a1049
Author 谷崎潤一郎
Piece 「秘密」
Reference 『谷崎潤一郎』
Pages in Reference 44

Text

夥(おびただ)しい雨量が、天からざあざあと直瀉(ちょくしゃ)する喧囂(けんごう)の中に、何もかも打ち消されて、ふだん賑やかな広小路の通りも大概雨戸を締め切り、二三人の臀端折(しりはしょ)りの男が、敗走した兵士のように駈け出して行く。

Context Focus Standard Context
敗走した兵士

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 兵士 = 男=将兵
2 敵襲 = 大雨 大雨=襲撃

  • 動き方の描写とみると直喩だが、文字通り「男」を「兵士」に喩えていると分析するとドメインは重なるので提喩的に見える。比喩の結果、雨=敵が含意される。

Grammar

Construction AがBのようにC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C が-主語
2 B の[ように] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ように C 様-類似-連用形

Pragmatics

Category Effect
当てこすり (innuendo) 主人公の女装と倒錯的な美をモチーフにする本作品において、単なる男性は惨めなものとして表象される。
評価 (evaluation) 雨のなかを走る男性に対して、惨めという評価性を持った認識が提示される。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)