ex:a0893
「ただこの薄禿頭、お恰好の紅絹(もみ)のようなもの一つとなってしもうたか」
「ただこの薄禿頭、お恰好の紅絹(もみ)のようなもの一つとなってしもうたか」
Text
「花やかで美しかった、暖かで燃え立つようだった若い時のすべての物の紀念といえば、ただこの薄禿頭、お恰好の紅絹(もみ)のようなもの一つとなってしもうたかとおもえば、ははははは、月日というものの働きの今更ながら強いのに感心する。」
| Context | Focus | Standard | Context |
|---|---|---|---|
| お恰好の紅絹 | 薄禿頭 |
- 「紅絹(もみ)」とは絹織物の一種で、真赤に無地染めにした薄地の平絹のこと。
- 先行文脈に「過般も宴会の席で頓狂な雛妓めが、あなたのお頭顱とかけてお恰好の紅絹と解きますよ、というから、その心はと聞いたら、地が透いて赤く見えますと云って笑い転げた」とある。「暖かで燃え立つようだった若い時」も参照。
Rhetoric
| Category | |
|---|---|
| 1 | 直喩・シミリ (simile) |
| 2 | 象徴・シンボル (symbol) |
| 3 | 訂正・換言 (epanorthosis) |
| 4 | 暗示引用 (allusion) |
| 5 | 人物描写 (description of a character) |
Semantics
Grammar
| Lexical Slots | Conceptual Domain |
|---|---|
| A | Source |
| B | Target |
| Preceding | Morpheme | Following | Usage | |
|---|---|---|---|---|
| 1 | A | の[ような] | B | の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合 |
| 2 | A | [の]ような | B | 様-類似-連体形 |
Pragmatics
| Category | Effect |
|---|---|
| 象徴・シンボル (symbol) | 紅絹の赤さで、酔いの回った顔の赤さを表すと同時に、紅絹の絹織物を、花やかで美しい、若い頃の象徴として位置づけている。 |
| 暗示引用 (allusion) | 同作品の別のエピソードを暗示する。「過般も宴会の席で頓狂な雛妓めが、あなたのお頭顱とかけてお恰好の紅絹と解きますよ、というから、その心はと聞いたら、地が透いて赤く見えますと云って笑い転げた」(pp.21-22)に由来する。 |
| 人物描写 (description of a character) | 紅絹になぞらえることで顔の赤さに焦点を当てながら、酔いの回った様子を描いている。 |
最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)
