ex:a0169

「夫は正覚坊の排泄物」

「夫は正覚坊の排泄物」

Page Type Example
Example ID a0169
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

貞淑な妻を裏切った不信な夫は奸悪な海蛇だ。海鼠の腹から生れた怪物だ。腐木に湧く毒茸。正覚坊の排泄物。黴(かび)の中で一番下劣な奴。下痢をした猿。羽の抜けた禿翡翠(かわせみ)。

Context Focus Standard Context
正覚坊の排泄物

  • 繰り返しなので「だ」が省略されている。
  • 「〜は」という提題部分は省略されている。

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 排泄物 = 夫=排泄物

Grammar

Construction A-BはC-D
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Target
C Source
D Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A - B 統語関係
2 B D は-一般的事物に対する判断の主題
3 C - D 統語関係

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) 妻を裏切った夫というものは低劣であるという否定的な評価を背景とした罵倒を行う一環として非人間である正覚坊(アオウミガメ)を引き合いに出すことで、人間以下であるという評価を示し、さらにその排泄物であるとすることにより、無価値であり、かつ不快であるという評価を鋭く提示する。
人物描写 (description of a character) 一連の比喩によって、「不信な夫」の下劣さを描いている。
評価 (evaluation) 妻から夫に対して発せられた罵詈雑言の比喩によって否定的評価を示している。
過大誇張 (auxesis) 正覚坊のたとえが、妻の夫への罵倒の強さを増幅させる。
漸層法・クライマックス (climax) 比喩の列挙が進むにしがって否定的評価がより強く感じられる。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)