ex:a0153

「大蛸は忽ち手足を烈しく刺されて」

「大蛸は忽ち手足を烈しく刺されて」

Page Type Example
Example ID a0153
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 220

Text

エビルの慧眼(けいがん)が夫の顔色の変化を認めない訳がない。彼女は直ちに其の原因を突きとめた。一夜、徹底的に夫を糺弾(きゅうだん)した後、翌朝、男子組合のア・バイに向って出掛けた。夫を奪おうとした憎むべきリメイに断乎としてヘルリスを挑むべく、海盤車(ひとで)に襲いかかる大蛸(おおだこ)の様な猛烈さで、彼女はア・バイの中に闖入ちんにゅうした。  所が、海盤車(ひとで)と思った相手は、意外なことに痺れ鱏(えい)であった。一掴みと躍りかかった大蛸は忽ち手足を烈しく刺されて退却せねばならなかった。

Context Focus Standard Context
手足 (触手) を激しく刺されて

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 手足 = 触手 触手=手足

  • 「大蛸」は人間を表す比喩として用いられているが、この文脈では逆に、「手足」が大蛸の職種を指すものとして解釈される。

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
描写 (description) 痺れ鱏に刺されて手足の自由が効かなくなった蛸のイメージによって、夫を奪おうとした相手から思わぬ反撃を受けたことで適切に太刀打ちできなくなってしまった様子が読み取れる。同時に、身体的な傷を負っているということも示唆される。
寓意・アレゴリー (allegory) 直前の「大蛸」に連なる表現。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)