ex:a0006
「手を麻痺せしめし」
「手を麻痺せしめし」
Page Type | Example |
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Example ID | a0006 |
Author | 芥川龍之介 |
Piece | 「開化の殺人」 |
Reference | 『芥川龍之介』 |
Pages in Reference | 217 |
Text
「しかりしこうして予の英吉利(イギリス)より帰朝するや、予は明子の既に嫁(か)して第×銀行頭取満村恭平の妻となりしを知りぬ。予は即座に自殺を決心したれども、予が性来の怯懦(きょうだ)と、留学中帰依したる基督(キリスト)教の信仰とは、不幸にして予が手を麻痺せしめしをいかん。」
Context | Focus | Standard | Context |
---|---|---|---|
予が手を | 麻痺せしめ | (止め) |
Rhetoric
Category | |
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1 | 隠喩・メタファー (metaphor) |
2 | 擬人法 (personification) |
3 | 転喩 (metalepsis) |
4 | 心理描写 (psychological-description) |
Semantics
- 麻痺しているとき、手は動かなくなる。この点でFocusとStandardは経験的な共起関係にある。しかし、ここでの「麻痺」は比喩的であり、実際には麻痺していないので転喩 (metalepsis)ではない。
Grammar
Construction | |
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Mapping Type |
Lexical Slots | Conceptual Domain |
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Preceding | Morpheme | Following | Usage |
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Pragmatics
Category | Effect |
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擬人法 (personification) | 怯懦と信仰という心理状態を客体化することによって、己の行動は自分の意志でなんとかできるはずなのに、その行動をとった責任から逃れようとしている様に感じられる。 |
心理描写 (psychological-description) | あたかも両手に麻酔をかけられたかのように全く力が入らなかった、という主観的認識が表現されている。そのように感じられるほど、「予」が自殺に恐怖と抵抗を感じていたということが見て取れる。 |
最終更新: 2024/01/26 12:12 (外部編集)