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「俺は石だぞ」

Page Type Example
Example ID a1252
Author 梶井基次郎
Piece 「交尾」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 63

Text

私は一度河鹿をよく見てやろうと思っていた。 河鹿を見ようと思えばまず大胆に河鹿の鳴いている瀬のきわまで進んでゆくことが必要である。これはそろそろ近寄って行っても河鹿の隠れてしまうのは同じだからなるべく神速に行なうのがいいのである。瀬のきわまで行ってしまえば今度は身をひそめてじっとしてしまう。『俺はだぞ。俺は石だぞ。』と念じているような気持で少しも動かないのである。

Context Focus Standard Context
(俺)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = おれ 我=石

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
擬物法・結晶法 (hypostatization) 自分自身に「石だ」と言い聞かせている。自分は石という無生物で意識をもたず、したがって周囲の環境・状況に反応することもないのだ、と考えさせようとする。自身の身体感覚を打ち消そうとしていることが見て取れる。
異例結合 (-) 人を表す「自分」の叙述に無生物の「石」を用いている。
代称・ケニング (kenning) 自分自身に「石だ」と言い聞かせている。自分は石という無生物で意識をもたず、したがって周囲の環境・状況に反応することもないのだ、と考えさせようとする。自身の身体感覚を打ち消そうとしていることが見て取れる。
イメジャリー・イメージ (imagery) 「石」のイメージを提示することで、何ものにも反応することない様子を思い起こそうとしている。