目次

「この傍観者の利己主義をそれとなく感づいた」

Page Type Example
Example ID a0902
Author 芥川龍之介
Piece 「鼻」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 46

Text

――人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる。そうしていつの間にか、消極的ではあるが、ある敵意をその人に対して抱くような事になる。――内供が、理由を知らないながらも、何となく不快に思ったのは、池の尾の僧俗の態度に、この傍観者の利己主義をそれとなく感づいたからにほかならない。

Context Focus Standard Context
傍観者 (池の尾の僧俗) の利己主義をそれとなく感づいた

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 傍観者 > 僧俗 関係者>僧俗

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
定義 (definition) 不幸な出来事を切り抜けた他者に対していつの間にか消極的な敵意を抱くようななるという心理を、その出来事を側から見ている人間に特有のものと特徴づける。
対照法・対照 (antithesis) 不幸な出来事を実際に経験しそれを切り抜けた当人と、それに直接関わることなくただ側から眺めていただけの人の立場の違いを際立たせる。