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「よく廻った独楽が完全な静止に澄むように」

Page Type Example
Example ID a2438
Author 梶井基次郎
Piece 「桜の樹の下には」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 44

Text

いったいどんな樹の花でも、いわゆる真っ盛りという状態に達すると、あたりの空気のなかへ一種神秘な雰囲気を撒き散らすものだ。それは、よく廻った独楽が完全な静止に澄むように、また、音楽の上手な演奏がきまってなにかの幻覚を伴うように、灼熱した生殖の幻覚させる後光のようなものだ。それは人の心を撲たずにはおかない、不思議な、生き生きとした、美しさだ。

Context Focus Standard Context
よく廻った独楽が完全な静止に澄む (樹の花が真っ盛りという状態に達すると神秘な雰囲気を撒き散らす)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 独楽 = 花=手玉

Grammar

Construction AはBようにC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-既出のものに関する判断の主題
2 B ように C 様-類似-連用形

Pragmatics

Category Effect
風景描写 (scene-description) 視点人物の眼に映った桜の花の盛りの美しさを描出する。
イメジャリー・イメージ (imagery) 独楽をうまく回した時に心棒や本体にブレが生じず一見すると回転していないように見える様子を引き合いに出すことで、盛りの桜の美しさが煌びやかさなどの動的なものではなく、幽玄さなどの静的な雰囲気を湛えていることを表現する。
迫真法・活写法・現前化 (hypotyposis) 視点人物の目に映る神秘的な情景が、読者にも生き生きと伝わるように、イメージを用いている。
反復法・反復 (repetition) 直喩を反復して使用している。一つのイメージだけでなく、複数のイメージを提示することで、視点人物の目に映る情景を様々な角度から描出する。