目次

「豎牛の顔が、真黒な原始の混沌に根を生やした一個の物のように思われる」

Page Type Example
Example ID a2346
Author 中島敦
Piece 「牛人」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 291-292

Text

傍を見上げると、これまた夢の中とそっくりな豎牛の顔が、人間離れのした冷酷さを湛えて、静かに見下している。その貌はもはや人間ではなく、真黒な原始の混沌に根を生やした一個の物のように思われる。

Context Focus Standard Context
真黒な原始の混沌に根を生やした一個の物 豎牛

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 こんとん = 人間 人間=乱れ

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A B は-既出のものに関する判断の主題
2 B の[ように思われる] の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ように[思われる] 様-類似-連用形
4 B [のように]思わ[れる] 思う(おもう)
5 B [のように思わ]れる れる-自然-終止形

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 「豎牛」という人間を一個の物体として表すことで、人間である発話者との絶対的な懸隔を意識させる。
誇張法 (hyperbole) 物体としての豎牛が人間社会のものではなく、混沌という無秩序に属するものであるという異質性や捉えどころのなさを際立たせる。
混合比喩 (mixed metaphor) 「混沌」という状態を植物と同時に物体であるかのように描写することで、豎牛の異質性を示唆する。
人物描写 (description of a character) 物体としての混沌になぞらえることで、豎牛の人となりや雰囲気を描いている。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 「混沌」という状態に「真黒」という視覚的特性を付与することで、それ自体を直接目視できるかのような印象を与える。