目次

「故国に片足突っ込んだ儘(まま)」

Page Type Example
Example ID a2305
Author 中島敦
Piece 「盈虚」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 267

Text

亡命太子は趙簡子の軍に擁せられて意気揚々と黄河を渡った。愈々衛の地である。戚(せき)の地迄来ると、しかし、其処(そこ)からは最早一歩も東へ進めないことが判った。太子の入国を拒む新衛侯の軍勢の邀撃(ようげき)に遇ったからである。戚の城に入るのでさえ、喪服をまとい父の死を哭しつつ、土地の民衆の機嫌をとりながらはいらなければならぬ始末であった。故国に片足突っ込んだ儘(まま)、彼は其処に留まって機を待たねばならなかった。それも、最初の予期に反し、凡そ十三年の長きに亘って。

Context Focus Standard Context
故国に 片足突っ込んだ (戻りかけた)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 > 滞在 足>滞在

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) 国境に立って片足だけを国内に入れている様を描くことで、衛の国に入れそうで入れない状況を大袈裟に描く。
イディオム・慣用表現 (idiom) 中途半端な状態を示す言い回しとして慣習化した「片足を突っ込む」を用いている。
描写 (description) 慣習化した表現を用いて、故国に帰れない微妙な状況を描く。