目次

「墨汁のような悔恨やいらだたしさが拡がってゆく」

Page Type Example
Example ID a2188
Author 梶井基次郎
Piece 「冬の日」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 298-299

Text

翳ってしまった低地には、彼の棲んでいる家の投影さえ没してしまっている。それを見ると堯(たかし)の心には墨汁のような悔恨やいらだたしさが拡がってゆくのだった。

Context Focus Standard Context

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 墨汁 = 鬱憤 憤り=墨

Grammar

Construction AのようなB
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A の[ような] B の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
2 A [の]ような B 様-類似-連体形

Pragmatics

Category Effect
アナロジー・類推 (analogy) 負の感情を墨汁という液体に擬えることで、液体の拡散と感情の広がりの類比関係を作る。
心理描写 (psychological-description) 液体の拡散と感情の広がりの類比関係を作り、心の中を悔恨・苛立たしさという負の感情が占めていく様を想起させる。
イメジャリー・イメージ (imagery) 負の感情が心の明るい部分を消し去るものであることを墨汁の持つ黒さによって暗示する。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 後悔や苛立たしさという感情に、墨汁が有する黒さや液体性という物理特性を付与する。