「夜晩(おそ)く鏡を覗(のぞ)くのは時によっては非常に怖(おそ)ろしいものである。自分の顔がまるで知らない人の顔のように見えて来たり、眼が疲れて来る故か、じーっと見ているうちに醜悪な伎楽(ぎがく)の腫(は)れ面(おもて)という面そっくりに見えて来たりする。さーっと鏡の中の顔が消えて、あぶり出しのようにまた現われたりする。片方の眼だけが出て来てしばらくの間それに睨(にら)まれていることもある。しかし恐怖というようなものもある程度自分で出したり引込めたりできる性質のものである。子供が浪打際で寄せたり退いたりしている浪に追いつ追われつしながら遊ぶように、自分は鏡のなかの伎楽の面を恐れながらもそれと遊びたい興味に駆られた。」
| Context | Focus | Standard | Context | 
|---|---|---|---|
| 伎楽の面 | (自分の顔) | 
| Construction | |
|---|---|
| Mapping Type | 
| Lexical Slots | Conceptual Domain | 
|---|
| Preceding | Morpheme | Following | Usage | 
|---|
| Category | Effect | 
|---|---|
| 縁語・縁装法 (-) | 先行の「醜悪な伎楽(ぎがく)の腫(は)れ面(おもて)という面そっくりに見えて来たりする」に連なる表現。 | 
| 誇張法 (hyperbole) | 暗闇の中で鏡に写る自分の顔が、伎楽の面(腫れ面)がもつような醜悪さを帯びて見えることが、誇張して表現されている。 |