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「醜悪な伎楽の腫れ面という面そっくりに見えて来たりする」

Page Type Example
Example ID a2127
Author 梶井基次郎
Piece 「泥濘」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 211

Text

夜晩く鏡を覗くのは時によっては非常に怖ろしいものである。自分の顔がまるで知らない人の顔のように見えて来たり、眼が疲れて来る故か、じーっと見ているうちに醜悪な伎楽の腫れ面という面そっくりに見えて来たりする。

Context Focus Standard Context

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 顔=面

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A 見えて が-主語
2 B そっくりに[見えて来たりする] =-らしい(らしい)
3 B [そっくりに]見え[て来たりする] 判ずる・判じる(はんずる・はんじる)
4 B [そっくりに見え]て[来たりする] て-補助用言に連なる用法
5 B [そっくりに見えて]来[たりする] 来る(くる)
6 B [そっくりに見えて来]たり[する] たり-「〜たり〜たりする」
7 B [そっくりに見えて来たり]する する(する)

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 鏡をじっと見つづけて疲労した眼には、自分の顔のゲシュタルトを保てず、自分の顔であるという同一性の認識が崩れ、自身に対する不快な感情だけが知覚に反映し、伎楽の面のなかでも醜悪な腫れ面として立ち現れる認識を表現する。
明晰 (clarity) 「醜悪な伎楽の腫れ面」を引き合いに出すことで、自分自身の顔が普段とはどの程度異なって見えるかを分かりやすく示す。