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「すべて真実の黄金に化していた」

Page Type Example
Example ID a2095
Author 太宰治
Piece 「ロマネスク」
Reference 『太宰治』
Pages in Reference 54

Text

二十二歳をむかえたときの三郎の嘘はすでに神に通じ、おのれがこうといつわるときにはすべて真実の黄金に化していた。黄村のまえではあくまで内気な孝行者に、塾に通う書生のまえでは恐ろしい訳知りに、花柳の巷では即ち団十郎、なにがしのお殿様、なんとか組の親分、そうしてその辺に些少の不自然も嘘もなかった。

Context Focus Standard Context
黄金 真実

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 黄金 = 真実 真=金銀

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A 化していた は-既出のものに関する判断の主題
2 B に[化していた] に-変化・帰着させる状態
3 B [に]化し[ていた] undefined
4 B [に化し]て[いた] て-補助用言に連なる用法
5 B [に化して]い[た] 居る(いる)
6 B [に化してい]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
撞着語法・対義結合・オクシモロン (oxymoron) 三郎の嘘が非常に洗練されており、それを聞く人が嘘と見抜けなくなっており真理として捉えられていることを、嘘というネガティブな事象を黄金というポジティブな事物と結合させる対義結合的に表現することで表す。
象徴・シンボル (symbol) 「黄金」が価値の高い事物の代表・典型として選択されている。
イメジャリー・イメージ (imagery) 三郎の嘘に、黄金のような輝きや価値の高さを感じさせる。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 「嘘」という言語行為に、輝きや重量といった黄金の物理的特性を付与し、それが真実と同等のものとみなされていたことを示す。