目次

「同時にまた彼の七八年前には色彩を知らなかったのを発見した」

Page Type Example
Example ID a1988
Author 芥川龍之介
Piece 「或阿呆の一生」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 424

Text

三十歳の彼はいつの間かある空き地を愛していた。そこにはただ苔の生えた上に煉瓦や瓦の欠片などが幾つも散らかっているだけだった。が、それは彼の目にはセザンヌの風景画と変りはなかった。 彼はふと七八年前の彼の情熱を思い出した。同時にまた彼の七八年前には色彩を知らなかったのを発見した。

Context Focus Standard Context
色彩 () を知らなかった

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 色彩 > 木石 色相>花鳥

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
描写 (description) 色彩の有無が絵画の様相を全く変えてしまうことになぞらえ、「彼」にとっての世界の見え方が非常に大きく転換した様を描く。
過大誇張 (auxesis) 色彩の有無を引き合いに出すことで、「彼」にとって世界の見え方が転換した幅の大きさに際立ちを与える。
イメジャリー・イメージ (imagery) 彩色されていない絵画のモノトーンなイメージを喚起することで、「色彩」を知る前の「彼」の目には、世界が味気ないものと映っていたかのような印象を与える。