目次

「それは丁度卵の白味をちよつと滴らしたのに近いものだつた」

Page Type Example
Example ID a1967
Author 芥川龍之介
Piece 「或阿呆の一生」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 401

Text

その部屋の隅にはアルコオルを満した、大きい硝子の壺の中に脳髄が幾つも漬つてゐた。彼は或脳髄の上にかすかに白いものを発見した。それは丁度卵の白味をちよつと滴らしたのに近いものだつた。

Context Focus Standard Context
卵の白味をちよつと滴らしたの 白いもの

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A ものだった は-既出のものに関する判断の主題
2 ちょうど 近い ちょうど(ちょうど)
3 B に[近いものだった] に-比較の基準
4 B [に]近い[ものだった] 近い(ちかい)
5 B [に近い]もの[だった] 対象(たいしょう)
6 B [に近いもの]だっ[た] だ-断定・指定-連用形
7 B [に近いものだっ]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
描写 (description) アルコール漬けになった脳髄に付いている白い部位の見た目を描写する。
イメジャリー・イメージ (imagery) アルコール漬けになった脳髄に付いている白い部位の見た目を、卵白という身近な事物を用いることでその形状に類似した物として表現する。
明晰 (clarity) 脳髄に付属する部位は普段目にすることはないが、卵白のイメージを借りることで読者が想起しやすいようにしている。