目次

「胃の腑が不規則な大波を描くような異(い)な心持」

Page Type Example
Example ID a1898
Author 夏目漱石
Piece 「思い出すことなど」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 366

Text

森成さんが来てもこの苦しみはちょっと除(と)れなかった。胸の中を棒で攪(か)き混まぜられるような、また胃の腑(ふ)が不規則な大波をその全面に向って層々と描き出すような、異(い)な心持に堪たえかねて、床(とこ)の上に起き返りながら、吐いて見ましょうかと云って、腥(なまぐさ)いものを面(ま)のあたり咽喉(のど)の奥から金盥(かなだらい)の中に傾けた事もあった。

Context Focus Standard Context
胃の腑が不規則な 大波をその全面に向って層々と描き出す (不快感を重ねる) ような、異(い)な心持

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 大波 = 胃液 体液=大波

Grammar

Construction AようなB心持ち
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A ような[心持ち] 様-類似-連体形
2 B [ような]心持ち 気持ち(きもち)

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 波という自然現象を引き合いに出すことで、胃の中身が不規則に動いていることを示す。
アナロジー・類推 (analogy) 波のもつ威力の強さによって、胃の動きが自身に負担をかけるものであることを示す。
心理描写 (psychological-description) その様子が自分自身ではっきりと知覚できるものであることを「描き出す」という描写行為の指定を行うことで表現する。