目次

「歓楽を嫉(ねた)む実生活の鬼の影が風流に纏(まつわ)る」

Page Type Example
Example ID a1886
Author 夏目漱石
Piece 「思い出すことなど」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 357

Text

それは歓楽を嫉(ねた)む実生活のの影が風流に纏(まつわ)るためかも知れず、または句に熱し詩に狂するのあまり、かえって句と詩に翻弄(ほんろう)されて、いらいらすまじき風流にいらいらする結果かも知れないが、それではいくら佳句(かく)と好詩(こうし)ができたにしても、贏(か)ち得(う)る当人の愉快はただ二三同好(どうこう)の評判だけで、その評判を差し引くと、後(あと)に残るものは多量の不安と苦痛に過ぎない事に帰着してしまう。

Context Focus Standard Context
歓楽を嫉む 実生活 が風流に纏(まつわ)る

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 実生活 生活=鬼

Grammar

Construction AのBのC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A B の-同格(同じ内容)
2 B C の-所有主

Pragmatics

Category Effect
アナロジー・類推 (analogy) 実生活を害悪の象徴である鬼になぞらえることで、実生活と俳句や漢詩を作るという風流の生活が調和せず、いくら良い作品ができても実生活の不安があると喜びが減ってしまうということを示唆する。
イメジャリー・イメージ (imagery) 人に害をなす鬼と表彰することで、実生活が風流の喜びを失わせる力を持っていることを示す。
対照法・対照 (antithesis) 実生活を鬼になぞらえることで、風流の生活との間にコントラストを生む。