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「有形無形の両方面から輝やいて見える」

Page Type Example
Example ID a1849
Author 夏目漱石
Piece 「吾輩は猫である」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 303

Text

妻君は命ぜられた通り風呂場へ行って両肌(もろはだ)を脱いで御化粧をして、箪笥(たんす)から着物を出して着換える。自分の妻(さい)を褒ほめるのはおかしいようであるが、僕はこの時ほど細君を美しいと思った事はなかった。もろ肌を脱いで石鹸で磨き上げた皮膚がぴかついて黒縮緬(くろちりめん)の羽織と反映している。その顔が石鹸と摂津大掾(せっつだいじょう)を聞こうと云う希望との二つで、有形無形の両方面から輝やいて見える。

Context Focus Standard Context
その顔が石鹸と摂津大掾(せっつだいじょう)を聞こうと云う希望との二つで、有形無形の両方面から 輝やいて ()

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 輝く = 望む 望む=輝く

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
人物描写 (description of a character) 輝きの持つ不純物や汚れのない状態という性質を用いることで、風呂上がりの妻に対して見出している身体的精神的な美を表現する。
評価 (evaluation) 精神的な高まりによって相貌が異なる様子を、石けんで洗われたことによる身体的な綺麗さと同時に述べることによって、精神性を世俗に引き下げている。
イメジャリー・イメージ (imagery) 細君の表情が明るくなった様子について、あたかも物理的に光を発しているように感じられるほど明らかであったということを視覚的に表現している。