目次

「主人は書斎の中で神聖な詩人になりすましている」

Page Type Example
Example ID a1837
Author 夏目漱石
Piece 「吾輩は猫である」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 281

Text

帰って見ると主人は書斎の中で何か沈吟の体で筆を執っている。二絃琴の御師匠さんの所で聞いた評判を話したら、さぞ怒るだろうが、知らぬが仏とやらで、うんうん云いながら神聖な詩人になりすましている。

Context Focus Standard Context
うんうん云いながら神聖な 詩人 (大層に書きしたためている) になりすましている

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 詩人 = 主人 あるじ=文学者

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A - B 統語関係
2 B に[なりすましている] に-変化・帰着させる状態
3 B [に]なりすまし[ている] 化ける(ばける)
4 B [になりすまし]て[いる] て-補助用言に連なる用法
5 B [になりすまして]いる 居る(いる)

Pragmatics

Category Effect
評価 (evaluation) なかなか文章が書けず呻吟している様子に対する、発話者の評価を提示する。
皮肉・反語・アイロニー (irony) 本当に神聖な詩人であると思っているわけではなく、書けてないくせに恰好だけは立派であるという皮肉な評価を、事々しい喩辞によって提示する。
人物描写 (description of a character) 「神聖な詩人」という王袈裟な表現を用いることで、「主人」がどのような状態に陥っているかを描いている。