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「ギリシャにもローマにも近代にも似ていない、ただ人間に似ている」

Page Type Example
Example ID a1768
Author 坂口安吾
Piece 「金銭無情」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 291

Text

先日私のもとに訪れてきた雑誌記者の話によれば、彼の恩師のDD氏は、哲学界の新人は? という記者の問に答えて、さて、新人かどうか、彼はすでに旧人だが、と、最上清人の名をあげて、彼の思想はギリシャにもローマにも近代にも似ていない、ただ人間に似ている。最も個性的な仕事が期待できるのだが、彼は著作しないだろうと答えたという。

Context Focus Standard Context
人間 (最上清人)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 人間 = 彼=人間

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A 似ている は-既出のものに関する判断の主題
2 ただ 似ている ただ(ただ)
3 B に[似ている] に-比較の基準
4 B [に]似て[いる] 同じゅうする(おなじゅうする)
5 B [に似て]いる 居る(いる)

Pragmatics

Category Effect
人物描写 (description of a character) 特定の哲学論ではなく、人間にとってより普遍的な問題を論じ、それを事々しく哲学書という形式で出そうとしていない姿を表す。
含意法 (implication) 「人間」という一般的な語によって「彼」を特徴づけることで、個別の哲学論ではなく普遍的な問題を論じているということを示す。
間接話法 (indirect speech) 「DD氏」の発言内容を間接的に引用している。