目次

「ちょうど一皿の焼鳥のように盛られ並べられている」

Page Type Example
Example ID a1746
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 275

Text

犬と並んで同じように焼かれている死体もあるが、それは全く犬死で、然しそこにはその犬死の悲痛さも感慨すらも有りはしない。人間が犬のごとくに死んでいるのではなく、犬と、そして、それと同じような何物かが、ちょうど一皿の焼鳥のように盛られ並べられているだけだった。犬でもなく、もとより人間ですらもない。

Context Focus Standard Context
一皿の焼鳥 (犬と並んで同じように焼かれている死体)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 焼き鳥 = 死体 かばね=焼き魚

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C が-主語
2 ちょうど ように ちょうど(ちょうど)
3 B の[ように] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
4 B [の]ように C 様-類似-連用形
5 C だけ[だった] だけ-限度
6 C [だけ]だっ[た] だ-断定・指定-連用形
7 C [だけだっ]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
評価 (evaluation) 大空襲により焼け焦げて死んだ人間を、同じく焼きによる食物である焼き鳥に擬えることで、一般に尊いとされる個人の命が、安価な一皿の焼き鳥と等価であることを示す。
対照法・対照 (antithesis) 大空襲により焼け焦げて死んだ人間を、同じく焼きによる食物である焼き鳥に擬えることで、一般に尊いとされる個人の命が、安価な一皿の焼き鳥と等価であることを示し、大空襲の大規模な破壊とコントラストを作る。
イメジャリー・イメージ (imagery) 大空襲により焼け焦げて死んだ人間を、同じく焼きによる食物である焼き鳥に擬えることで、その質感や色合いを具体的に想起させる。
風景描写 (scene-description) 大空襲後の悲惨な状況を、焼死体に注目しながら描いている。