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「人間が犬のごとくに死んでいるのではなく」

Page Type Example
Example ID a1745
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 275

Text

犬と並んで同じように焼かれている死体もあるが、それは全く犬死で、然しそこにはその犬死の悲痛さも感慨すらも有りはしない。人間が犬のごとくに死んでいるのではなく、犬と、そして、それと同じような何物かが、ちょうど一皿の焼鳥のように盛られ並べられているだけだった。犬でもなく、もとより人間ですらもない。

Context Focus Standard Context
犬のごとくに死んでいる (犬死)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 人間 人間=犬

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C が-主語
2 B の[ごとくに] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ごとく[に] C ごとし-類似-連用形
4 B [のごとく]に C だ-断定・指定-連用形
5 C の[ではなく] の-「〜のだ」
6 C [の]で[はなく] て-補助用言に連なる用法
7 C [ので]は[なく] は-接続詞の強調
8 C [のでは]なく ない(ない)

Pragmatics

Category Effect
評価 (evaluation) 非人間的存在である犬が死ぬという価値の低い事象に比することで、なんらの価値も感慨も存在しないものとして人の死が描かれている。
イディオム・慣用表現 (idiom) 「犬死」という慣用的な隠喩から想起される意味を否定し、実際の状況のより詳しい説明を注釈している。