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「まったく焼鳥と同じことだ」

Page Type Example
Example ID a1743
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 275

Text

三月十日の大空襲の焼跡もまだ吹きあげる煙をくぐって伊沢は当もなく歩いていた。人間が焼鳥と同じようにあっちこっちに死んでいる。ひとかたまりに死んでいる。まったく焼鳥と同じことだ。怖くもなければ、汚くもない。

Context Focus Standard Context
焼鳥 (人間)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 焼き鳥 = 人間 人間=焼き魚

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 まったく 同じ すこぶる(すこぶる)
2 A と[同じことだ] と-比較の基準
3 A [と]同じ[ことだ] 同じ(おなじ)
4 A [と同じ]こと[だ] 事(こと)
5 A [と同じこと]だ だ-断定・指定-終止形

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 焼き鳥と表現することで、大空襲によって焦土と化した東京において、人間もまた焼け焦げてそこらに転がっている様子を想起させる。
明晰 (clarity) 空襲によって焼死した人間の死体について、焼けた質感や色などを具体的に想起させる。
評価 (evaluation) 焼き鳥という安価な食べ物になぞらえることで、大規模な破壊に対する個人の死の矮小さを暗示する。
風景描写 (scene-description) 大空襲によって焦土と化した東京に転がる焼死体に焦点を当て、凄惨な景色を描いている。
畳語法 (epizeuxis) 直前の「人間が焼き鳥と同じように」という表現をとりあげ、「まったく焼鳥と同じことだ」とより強い言い方にすることで、焼死体と焼鳥との類似性を強調している。