目次

「やや似たものがあるとすれば芋虫が五尺の長さにふくれあがってもがいている動きぐらいのものだろう」

Page Type Example
Example ID a1741
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 274

Text

それはただ本能的な死への恐怖と死への苦悶があるだけで、それは人間のものではなく、虫のものですらもなく、醜悪な一つの動きがあるのみだった。やや似たものがあるとすれば、一寸五分ほどの芋虫が五尺の長さにふくれあがってもがいている動きぐらいのものだろう。

Context Focus Standard Context
一寸五分ほどの芋虫が五尺の長さにふくれあがってもがいている動き (醜悪な一つの動き)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 芋虫 = 人間 人間=昆虫

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A ぐらい[のものだろう] くらい-弱い・軽いものとして扱う
2 A [ぐらい]の[ものだろう] の-形容動詞の連体形語尾に準ずる用法
3 A [ぐらいの]もの[だろう] 対象(たいしょう)
4 A [ぐらいのもの]だ[ろう] だ-断定・指定-未然形
5 A [ぐらいのものだろ]う う-推量-終止形

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 数センチの芋虫が人間と同じ5尺(15㎝)に膨れあがるという醜怪なイメージを提示することで、白痴の女の死への苦悶の様子について、それが知性を感じさせず非人間的であるという印象を与える。
人物描写 (description of a character) 数センチの芋虫が人間と同じ5尺(15㎝)に膨れあがるという醜怪なイメージを提示することで、白痴の女の死への苦悶の様子を具体的に描いている。
評価 (evaluation) 数センチの芋虫が人間と同じ5尺(15㎝)に膨れあがるという醜怪なイメージを提示することで、白痴の女の死への苦悶の様子について、それが知性を感じさせず非人間的であり、虫にすら比することのできない低劣・醜悪なものとして提示する。