目次

「二十七の青春のあらゆる情熱が漂白されて」

Page Type Example
Example ID a1677
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 265

Text

その芸術の前ではただ一粒の塵埃でしかないような二百円の給料がどうして骨身にからみつき、生存の根底をゆさぶるような大きな苦悶になるのであろうか。(…)眼のさきの全べてをふさぎ、生きる希望を根こそぎさらい去るたった二百円の決定的な力、夢の中にまで二百円に首をしめられ、うなされ、まだ二十七の青春のあらゆる情熱が漂白されて、現実にすでに暗黒の曠野の上を茫々と歩くだけではないか。

Context Focus Standard Context
情熱が 漂白されて (消え去って)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 漂白する = 消え去る 消え去る=酸化する

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 漂白によって布から色彩が完全に消え去ってしまう視覚的イメージを喚起し、二百円という収入上の制約によってそれまで抱いていた情熱が完全に消えて無くなってしまったという印象を与える。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 衣類から汚れを取り去る洗剤のように、二百円という収入上の制約が化学的な作用によって当該人物の芸術への情熱を奪ってしまったという印象を与える。
描写 (description) 二百円という収入上の制約が当該人物の芸術への情熱にとってどのような意味をもっていたのかが描かれている。
評価 (evaluation) 当該人物の芸術への情熱に強い影響を与える二百円という収入上の制約について、否定的な評価が示されている。