目次

「木も建物も何もない平な墓地になってしまう」

Page Type Example
Example ID a1673
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 264-265

Text

ああ日本は敗ける。泥人形のくずれるように同胞たちがバタバタ倒れ、吹きあげるコンクリートや煉瓦の屑と一緒くたに無数の脚だの首だの腕だのが舞いあがり、木も建物も何もない平な墓地になってしまう。どこへ逃げ、どの穴へ追いつめられ、どこで穴もろとも吹きとばされてしまうのだか、夢のような、けれどもそれはもし生き残ることができたら、その新鮮な再生のために、そして全然予測のつかない新世界、石屑だらけの野原の上の生活のために、伊沢はむしろ好奇心がうずくのだった。それは半年か一年さきの当然訪れる運命だったが、その訪れの当然さにも拘(かかわ)らず、夢の中の世界のような遥かな戯れにしか意識されていなかった。

Context Focus Standard Context
墓地 (戦野) になってしまう

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 墓地 = 戦野 踏み場=墓地

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
風景描写 (scene-description) 死者を集める場所である墓地になぞらえることで、日本のいたるところが爆撃によって荒廃し、遺体であふれかえっていた様が描かれている。
イメジャリー・イメージ (imagery) 爆撃によって荒廃した場所に、墓地と見紛うほど多数の遺体が残されていたという印象を与える。