目次

「芸術の前ではただ一粒の塵埃でしかないような二百円の給料」

Page Type Example
Example ID a1668
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 264

Text

彼は芸術を夢みていた。その芸術の前ではただ一粒の塵埃でしかないような二百円の給料がどうして骨身にからみつき、生存の根底をゆさぶるような大きな苦悶になるのであろうか。

Context Focus Standard Context
芸術の前では ただ一粒の塵埃 (二百円の給料)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 塵埃 = 給料 給与=ちり

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A で[しかないような] B て-補助用言に連なる用法
2 A [で]しか[ないような] B しか-否定(主格以外)
3 A [でしか]ない[ような] B ない(ない)
4 A [でしかない]ような B 様-類似-連体形

Pragmatics

Category Effect
対照法・対照 (antithesis) 発話者が憧れている芸術という非日常的な事柄と、給料という極めて現実的な事柄との間に対比を感じさせる。
誇張法 (hyperbole) 発話者が憧れている芸術という非日常的な事柄に対して、給料という極めて現実的な事柄を「塵埃」と表現することで、現実的・生活密着的な事柄がもつ価値の低さを示している。
評価 (evaluation) 発話者が憧れている芸術という非日常的な事柄に対して、給料という極めて現実的な事柄を「塵埃」と表現することで、現実的・生活密着的な事柄に対する侮蔑感を表示する。