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「人間の心は苦難に対して鋼鉄のごとくでは有り得ない」

Page Type Example
Example ID a1579
Author 坂口安吾
Piece 「堕落論」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 228

Text

戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄のごとくでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。

Context Focus Standard Context
鋼鉄 (人間の心)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 鋼鉄 = 心=鉄

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C は-既出のものに関する判断の主題
2 B の[ごとくでは] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ごとく[では] C ごとし-類似-連体形
4 B [のごとく]で[は] C だ-断定・指定-連用形
5 B [のごとくで]は C は-否定的主張

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 硬さの典型的事物である鋼鉄を引き合いに出すことで人の心の堅固さに焦点を当て、かつそれを否定することで人がそこまでの堅固さを持ちえないことを表現する。
象徴・シンボル (symbol) 高い硬度をもつものの典型として鋼鉄がとりあげられている。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 人間の心について、「固さ」という物理特性があるような印象を与える。