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「虚しい美しさが咲きあふれていた」

Page Type Example
Example ID a1575
Author 坂口安吾
Piece 「堕落論」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 226

Text

近頃の東京は暗いというが、戦争中は真の闇で、そのくせどんな深夜でもオイハギなどの心配はなく、暗闇の深夜を歩き、戸締なしで眠っていたのだ。戦争中の日本は嘘のような理想郷で、ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。

Context Focus Standard Context
美しさが 咲きあふれて (存在して)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 咲く = 存在する ある=咲く

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 「咲く」という語とのつながりでは、「美しさ」が花のように喩えられている。また「あふれる」という語とのつながりでは、「美しさ」は液体のように喩えられている。この2語が複合されることで、花と液体というなじみにくい概念が混合されたような独特のイメージが喚起される。
風景描写 (scene-description) 一面にあふれるように咲き乱れる花に気づかざるを得ないように、戦時中の日本には「虚しい美しさ」が明確に感じられたという主観的認識が表現されている。
対照法・対照 (antithesis) 美しく咲き乱れる花のイメージと実際の暗闇との間に、明暗の対比が感じられる。