目次

「廃墟がなければピクニックと全く変るところがない」

Page Type Example
Example ID a1558
Author 坂口安吾
Piece 「堕落論」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 223

Text

麹町(こうじまち)のあらゆる大邸宅が嘘のように消え失せて余燼(よじん)をたてており、上品な父と娘がたった一つの赤皮のトランクをはさんで濠端(ほりばた)の緑草の上に坐っている。片側に余燼(よじん)をあげる茫々(ぼうぼう)たる廃墟がなければ、平和なピクニックと全く変るところがない。

Context Focus Standard Context
片側に余燼をあげる茫々たる廃墟がなければ 平和なピクニック (現在の状況)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Elaboration
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A ば-仮定の順説条件
2 B と[全く変わるところがない] と-比較の基準
3 B [と]全く[変わるところがない] すこぶる(すこぶる)
4 B [と全く]変わる[ところがない] 違う(ちがう)
5 B [と全く変わる]ところ[がない] 所(ところ)
6 B [と全く変わるところ]が[ない] が-主語
7 B [と全く変わるところが]ない ない(ない)

Pragmatics

Category Effect
対照法・対照 (antithesis) 平和なピクニックのイメージを比喩的に導入することで、焼け野原となった周りの情景とのコントラストを形成する。
評価 (evaluation) 悲惨な状況のなかでも、一部の場面だけを切り取ることで、そこに平和な状況と変わらない姿があることを指摘している。