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「二苦労や七苦労で原書がお読めになるところまで行けない」

Page Type Example
Example ID a1469
Author 坂口安吾
Piece 「勉強記」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 140

Text

先生はやさしい心のお方だから、時々按吉をいたわって下さるのである。『いまに原書が読めるようにおなりでしょう』先生はにこにこと仰有るのだった。『もうひと苦労でございます』しかし按吉にしてみると、六時間も七時間も辞書をめくった挙句の果に、ようやくたったひとつの単語を突きとめて凱歌をあげる程だったから、この先二苦労や七苦労で原書がお読めになるところまで行けないことを知っていた。

Context Focus Standard Context
二苦労 (一苦労)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 多い = 著しい すこぶる=多い

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
もじり (-) 先生からの「もうひと苦労でございます」というなぐさめのもじり。「ひと苦労」という慣用句にもとづいて、数字部分を代替することで新奇表現を作っている。
兼用法・異義兼用 (syllepsis) 「一苦労」の「一」を文字通りの数量の意味が捉え、苦労が続くことを、苦労の数が増すこととして冗談的に捉えている。