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「肉体がそもそも辞書に化したかのような」

Page Type Example
Example ID a1468
Author 坂口安吾
Piece 「勉強記」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 140

Text

按吉はどこでどうして手に入れたかイギリス製の六十五円もする梵語辞典を持っていた。日本製の梵語辞典というものはないのである。これを十分も膝の上でめくっていると、膝関節がめきめきし、肩が凝(こ)って息がつまってくるのであった。これを五時間ものせている。目がくらむ。スポーツだ。探す単語はひとつも現れてくれないけれども、全身快く疲労して、大変勉強したという気持になってしまうのである。単語なんか覚えるよりも、もっと実質的な勉強をした気持になる。肉体がそもそも辞書に化したかのような、壮大無類な気持になってしまうのである。

Context Focus Standard Context
肉体が 辞書 () に化したかのような

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 辞書 = 肉体 肉体=辞書

Grammar

Construction AがBにCのようなD
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration
D Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A C が-主語
2 B C に-変化・帰着させる状態
3 C の[ような] D の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
4 C [の]ような D 様-類似-連体形

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 肉体が辞書と一体化するような感覚について述べることで、サンスクリット語の辞書をめくり続け、そこに没頭している様子を表す。