目次

「御好み通り傷の十は進上してお帰しするから覚えていろ」

Page Type Example
Example ID a1455
Author 坂口安吾
Piece 「勉強記」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 134

Text

「ねえ旦那。頭に傷がつくかも知れないね。なにぶん頭というものは、唐茄子(とうなす)ぐらいでこぼこのものでがすよ。ヘッヘッヘ」 「或る程度まで我慢します」と、按吉は冷静に答えたのだった。頭には頭蓋骨というものがある。頭を剃るということとハムマーで殴ることとは違うから、脳味噌に傷のできる憂いはない。それを充分心得ている顔付だった。フレンド軒[=床屋]は横を向いて息をのんだ。この唐変木め、御好み通り傷の十は進上してお帰しするから覚えていろと心に決めてしまったのだった。

Context Focus Standard Context
傷の十は 進上して (与えて)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 進上する ←→ 与える 贈る<-->やる

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
反語的緩和 (charientismus) つけられた傷をつけ返してやるという野蛮な行為に「進上」という謙譲表現を使うことにより、嫌味さを生み出している。