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「一番鬮(くじ)の本鬮はドッチミチこっちのもんだ」

Page Type Example
Example ID a1413
Author 夢野久作
Piece 「人間腸詰」
Reference 『夢野久作』
Pages in Reference 377

Text

ところがここに一つうまい事が持上りました。その女たちの中でも一等捌(さば)けるピン嬢(ちゃん)とチョキ嬢(ちゃん)という二人がノスタレだかオシッコだかわかりませんが病気になっちゃったんで、とりあえずの埋め合わせに聖路易(セントルイス)の支那料理屋に居たというチイチイっていうのとフイフイっていうのと二人の別嬪が手助けに来たんでげす。何しろ一人で卓子(テーブル)を六つ宛(ずつ)も持っているんで一人欠けても頬返(ほおげえ)しが附かないですからね。占めた。こいつは有難いことになったもんだと私(あっし)は内心でゾクゾク喜んじゃいました。ねえ。そうでしょう。今まで居た女には指一本さしても不可(いけ)なかったかも知れねえが、今度来た女なら差支(さしつけ)えなかろう。しかも向うが二人前ならこっちも二人前と云いてえが、片っ方が禿頭(はげあたま)の赤ッ鼻のノスタレじゃ問題にならねえ。若さといい、男前といい、一番鬮(くじ)の本鬮(ほんくじ)はドッチミチこっちのもんだがハテ。ドッチから先に箸(はし)を取ろうかテンデ、知らん顔をして「わんかぷ、てんせんす」のおまじないを唱えながら二三日ジッと様子を見ているとドウです。このチイ嬢(ちゃん)とフイ嬢(ちゃん)の二人が一緒に、あっしの方へ色目を使い初めたじゃ御座んせんか。

Context Focus Standard Context
一番鬮(くじ)の本鬮 (別嬪の娘)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 くじ = べっぴん 美人=くじ

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
尊大語 (-) 植木屋の老人を貶め、自分の価値が高いことを、懸賞でたったひとつしかない当たりくじに自分をなぞらえることで表している。
評価 (evaluation) 植木屋の老人と自分とを比べ、自分のほうが男として非常に価値が高いことを表現する。