「私のあこがれは『世を捨てる』という形態の上にあったので、そして内心は世を捨てることが不安であり、正しい希望を抛棄(ほうき)している自覚と不安、悔恨と絶望をすでに感じつづけていたのである。まだ足りない。何もかも、すべてを捨てよう。そうしたら、どうにかなるのではないか。私は気違いじみたヤケクソの気持で、捨てる、捨てる、捨てる、何でも構わず、ただひたすらに捨てることを急ごうとしている自分を見つめていた。自殺が生きたい手段の一つであると同様に、捨てるというヤケクソの志向が実は青春の跫音のひとつにすぎないことを、やっぱり感じつづけていた。」
Context | Focus | Standard | Context |
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自殺が | 生きたい | (生きていることを実感する手段) | 手段の一つである |
Construction | |
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Mapping Type |
Lexical Slots | Conceptual Domain |
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Preceding | Morpheme | Following | Usage |
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Category | Effect |
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逆説・パラドクス (paradox) | 「自殺」と「生きたい」という、己の生死に関わる矛盾した2つの概念について、表面的な衝動や情動と、より広く深い視点で見た心理の乖離や矛盾を短い言葉で表現している。 |
違反用法・語法違反 (solecism) | 「生きる手段」であれば、整合的な逆説として理解できる。 |
評価 (evaluation) | 自殺行為によって逆説的に満たそうとしている欲求が、単に生きることではなく、理想の生を生きることである(しかしそれは叶わない)という語り手の理解が暗示されている。 |