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「こういう動物の図々しいところ」

Page Type Example
Example ID a1249
Author 梶井基次郎
Piece 「交尾」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 62

Text

夜警はだんだん近づいて来た。この夜警は昼は葬儀屋をやっている、なんとも云えない陰気な感じのする男である。私は彼が近づいて来るにつれて、彼がこの猫を見てどんな態度に出るか、興味を起して来た。彼はやっともうあと二間ほどのところではじめてそれに気がついたらしく、立ち留った。眺めているらしい。彼がそうやって眺めているのを見ていると、どうやら私の深夜の気持にも人と一緒にものを見物しているような感じが起って来た。ところが猫はどうしたのかちっとも動かない。まだ夜警に気がつかないのだろうか。あるいはそうかも知れない。それとも多寡(たか)を括(くく)ってそのままにしているのだろうか。それはこういう動物の図々しいところでもある。彼らは人が危害を加える気遣(きづか)いがないと落ち着き払って少しぐらい追ってもなかなか逃げ出さない。それでいて実に抜け目なく観察していて、人にその気配が兆(きざ)すと見るやたちまち逃げ足に移る。

Context Focus Standard Context
こういう 動物 の図々しいところ

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 動物 > 動物>マングース

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
変態法 (-) 猫を「動物」という一般的な括りで表現する。直後の文章で、「彼らは人が危害を加える気遣きづかいがないと落ち着き払って少しぐらい追ってもなかなか逃げ出さない。」とあり、人に対するものとする認識を表す。
換称 (antonomasia) 猫を「動物」という一般的な括りで表現する。