目次

「人と一緒にものを見物しているような感じが起って来た」

Page Type Example
Example ID a1248
Author 梶井基次郎
Piece 「交尾」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 62

Text

夜警はだんだん近づいて来た。この夜警は昼は葬儀屋をやっている、なんとも云えない陰気な感じのする男である。私は彼が近づいて来るにつれて、彼がこの猫を見てどんな態度に出るか、興味を起して来た。彼はやっともうあと二間ほどのところではじめてそれに気がついたらしく、立ち留った。眺めているらしい。彼がそうやって眺めているのを見ていると、どうやら私の深夜の気持にも人と一緒にものを見物しているような感じが起って来た。ところが猫はどうしたのかちっとも動かない。

Context Focus Standard Context
人と一緒にものを見物している () 感じ

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Target
D Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 どうやら ような どうやら(どうやら)
2 A に[も] D に-抽象的な場所
3 A [に]も D も-強調
4 B ような C 様-例示-連体形
5 C D が-主語
6 D て[来た] て-補助用言に連なる用法
7 D [て]来[た] 来る(くる)
8 D [て来]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 共同で何かを注視している感覚を覚えていることを、「一緒にものを見物する」という仮定的な事態を提示することで表現する。
明晰 (clarity) 自分が注目している猫を夜警もまた見始めていることに気付いた際の心理状態を分かりやすく表現する。