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「それはあたかも目に見えない毒物のやうに」

Page Type Example
Example ID a1156
Author 芥川龍之介
Piece 「枯野抄」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 296

Text

文字通り骨と皮ばかりに痩せ衰へた、致死期の師匠の不気味な姿は、殆面を背けずにはゐられなかつた程、烈しい嫌悪の情を彼に起させた。いや、単に烈しいと云つたのでは、まだ十分な表現ではない。それはあたかも目に見えない毒物のやうに、生理的な作用さへも及ぼして来る、最も堪へ難い種類の嫌悪であつた。

Context Focus Standard Context
目に見えない毒物 (最も堪へ難い種類の嫌悪)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 毒物 = 嫌悪 嫌い=劇薬

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration
D Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A D は-既出のものに関する判断の主題
2 あたかも ように ちょうど(ちょうど)
3 B の[ように] C の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
4 B [の]ように C 様-類似-連用形
5 C - D 統語関係
6 D で[あった] て-補助用言に連なる用法
7 D [で]あっ[た] ある(ある)
8 D [であっ]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
明晰 (clarity) やせ衰えた師匠の姿が不快の感情を喚起し、精神的だけでなく生理的にも嫌悪を催す様子であることを効果的に表す。
擬物法・結晶法 (hypostatization) やせ衰えた師匠の姿を、生理的な身体への害を及ぼす毒物として表現する。
過大誇張 (auxesis) やせ衰えた師匠の姿に対して抱く不快の感情を比喩を通じて強調している。