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「この親父と子供を、懸命な珍妙さにおいて大立廻りを演じさせてしまう」

Page Type Example
Example ID a1101
Author 坂口安吾
Piece 「FARCEに就て」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 58

Text

この武人は、恋か何かのイキサツから自分の親父を敵として一戦を交えねばならぬという羽目に陥る。その煩悩(ぼんのう)を煩悩として悲劇的に表わすのも、その煩悩を諷刺して喜劇的に表わすのも、共にそれは一方的で、人間それ自身の、どうにもならない矛盾を孕んだ全的なものとしては表わし難いものである。ところがファルスは、全的に、これを取り扱おうとするものである。そこでファルスは、いきなりこの、敬愛すべき煩悶の親父と子供を、最も滑稽千万な、最も目も当てられぬ懸命な珍妙さにおいて、掴み合いの大立廻りを演じさせてしまうのである。

Context Focus Standard Context
懸命な () 珍妙さ

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 懸命 ←→ 珍妙 懸命<-->変

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
撞着語法・対義結合・オクシモロン (oxymoron) 「珍妙さ」というおかしさや諧謔性に関わる概念を「懸命な」という真面目さや真剣さに関わる概念で形容することにより、矛盾を生み出している。
評価 (evaluation) 「親父と子供」の主観的な「懸命(さ)」と外から見た客観的な「珍妙さ」と解釈できるが、「ファルスは、全的に、これを取り扱おうとする」とあるように、全体的な一体性を持つと語り手が評していることが伺える。