目次

「甘皮を一枚張ったようにぱさぱさ乾いている顔」

Page Type Example
Example ID a0873
Author 谷崎潤一郎
Piece 「秘密」
Reference 『谷崎潤一郎』
Pages in Reference 34

Text

夜が更(ふ)けてがらんとした寺中がひっそりした時分、私はひそかに鏡台に向って化粧を始めた。黄色い生地の鼻柱へ先(ま)ずベットリと練りお白粉(しろい)をなすり着けた瞬間の容貌は、少しグロテスクに見えたが、濃い白い粘液を平手で顔中へ万遍なく押し拡(ひろ)げると、思ったよりものりが好く、甘い匂いのひやひやとした露が、毛孔(けあな)へ沁(し)み入る皮膚のよろこびは、格別であった。(…) 甘皮を一枚張ったようにぱさぱさ乾いている顔の上を、夜風が冷やかに撫でて行く。

Context Focus Standard Context
甘皮を一枚張った (化粧をした)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 甘皮 = 化粧 化粧=樹皮

Grammar

Construction AようにBているC
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Elaboration
C Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A ように B 様-類似-連用形
2 B て[いる] C て-補助用言に連なる用法
3 B [て]いる C 居る(いる)

Pragmatics

Category Effect
アナロジー・類推 (analogy) 表皮を覆うという属性の一致を媒介として、化粧を甘皮として表象し、植物の内皮と同じように化粧が身体を薄く包みこんでいることを表す。