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「重い冷たい布が粘つくように肉体を包む」

Page Type Example
Example ID a0872
Author 谷崎潤一郎
Piece 「秘密」
Reference 『谷崎潤一郎』
Pages in Reference 32

Text

あの古着屋の店にだらりと生々しく下っている小紋縮緬(こもんちりめん)の袷(あわせ)———あのしっとりした、重い冷たい布が粘つくように肉体を包む時の心好さを思うと、私は思わず戦慄した。

Context Focus Standard Context
重い冷たい布が 粘つく 包む

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 粘つく = 包む 包む=粘る

Grammar

Construction AがBようにCをD
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Elaboration
B Source
C Target
D Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A D が-主語
2 B ように D 様-類似-連用形
3 C D を-目的・目標(他動詞)

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 小紋縮緬を着るときの質感について、体にきわめて密着するものであることを、粘性の液体に体を包まれるという仮定的な事態を設定し、粘液の密着性を想起させることで触覚的に表現する。
心理描写 (psychological-description) 粘液という強く肌感覚を喚起する動詞「粘つく」を用いることで、縮緬を着ることに対する主体のフェティッシュな感覚を喚起する。